名古屋を拠点に全国で活動する経営コンサルタントの毛利京申です。
おはようございます。
　早速ですが、今から30数年前の弁護士事務所に勤務していた時代の『破産を回避』したケースのお話をしたいと思います。
　この方法は、私は、依頼者にとって、一番利益が残り最善で一番いい方法だと思って実行した案件です。
その代わり破産の申立をするよりも、かなり手間がかかり大変な仕事になります。
私も弁護士から「無理をするな」と言われていた案件です。
一般的に破産申立だと書類を作成して裁判所に提出するだけで済みます。
変な労力は必要がないからです。

　この案件は、名古屋市内の住宅地にある鋳物屋さんのお話です。
　少し、古い話なので、かなり失念していることも多いですが、この企業は、数千坪の広い土地の上に工場を持っている鋳物屋さんでしたが、売上不振で、これ以上生産しても赤字が増えるだけという判断でした。
　そこで、先ずは現場を見に行きました。
　すると、立地も形もいい土地の隅に古い工場があり、その隣に小さな社員宿舎がありました。
他には、その土地の入り口付近の角に小さな社長の自宅と事務所がありました。

私は、このまま破産するのはもったいないなと思い、相場を知りたくて、知り合いのゼネコンにマンション用地で売るならいくらぐらいで処理できるか連絡したのです。
すると、大乗り気です。

　破産者が不動産を持っている場合は、先ずは、破産申立をすると破産管財人が裁判所から指定されます。
　その後、不動産は、管財人によって競売にかけられますが、一般的な売買価格よりも数割安く競売に付されます。
　
　私は、不動産にも精通していたので、大手ゼネコンにマンション用地として買ってもらい、その売買代金の1割程度立退料として社長の身内に支払ってもらうことを考えたのです。
　その立退料で、自宅部分の土地を買い戻すという方法です。
　よって、破産の依頼を任意整理に切り替えたのです。
　そうなると、銀行や取引先の同意を得る作業をしなければなりません。
ゼネコンは、鋳物工場の土から出る可能性のある水銀の調査をしてから土地の値段を出します。
　そこから債務を全て返済できるだけの価格になればいいのですが、そういう訳にはいきません。
　いろんな調整があります。
　売却代金から借入しているお金を全て返済できれば問題はありませんが、そうは行きません。
銀行が同意してくれなければ担保解除できないので、対銀行との折衝が始まります。
　それと、取引先との交渉も大切になります。
　メインの取引先は、大手企業でしたが、その旨を打診すると、大慌てになり、次の鋳物屋を探さなくてはならないし、そうなると金型も新たに製造しなければならないので、半年ぐらい猶予が欲しいと言われたので、廃業する日は、半年後と定め、各企業に示談交渉を開始したのです。
　すると、ラッキーだったのは、その大手企業が協力的で、毎月4倍の発注が来るようになったのです。
これがずっと続けば、破産をする必要はないというほど売り上げがあがりました。
　それが、半年続いたので、銀行の借入金に充当し、銀行が評価していた価格を満たすことができて、担保解除することができたのです。
　その後、ゼネコンが、私に紹介料を1％支払うとの申し出を受けましたが、私は、「そういうお金は貰いたくない。私は事業で失敗して、これから極貧生活になるのを知っていて、その関連するお金を貰うと、目覚めが悪いので、私にくれると言うなら社長に出して貰ってもいいですか？」とお断りして、社長の家族に渡してもらいました。
　よって、自宅は社長の身内名義で買い戻すことができたので、そのまま住めるようになったのです。

　事業で失敗しても、破産しないで済むようないろんな抜け道が隠れていることもあるのです。

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